甘いもん好きおやじのブログ

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西村賢太「随筆集 一私小説書きの独語」貫太こと賢太の生い立ち

私小説のベースとなった賢太の体験というか、生い立ちが書かれています。
中学時代から成人して、イカやタコの冷凍を抱っこする仕事、そして物書きになるまで。

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半ば自叙伝的な内容です。
ここに書かれていることが八割本当なら、賢太氏は相当親不孝です。
中卒で家を出て一人暮らししてアルバイト生活を始める。
ここだけ読めば、未成年で独立して偉いと思っちゃいますが、実は親から金を出してもらうは、家賃は踏み倒すわ、仕事しないわ、金が必要になれば実家に戻って親にせびるは、しまいには暴力も振るいます。
全然偉くない。
で、この辺りの経験が、賢太氏の私小説のベースになっていると思われ、本書の内容が小説にもチラホラ現れます。
まぁ、脚色もあるのでしょうが、、、なかなかゲスだなあ。
読んでて自分の目にやたら目立ったのは、苦役列車の映画を随分気に入っていないんだなということ。
原作を改悪しなければ好きなようにアレンジしてよいとのことで、監督にお任せしていたそう。
だけど、試写会で出来たものを見て出来が自分にとって悪いことに落胆し、二度と見ないとまで言っている。
結句、あきたりないのだそうです。
原作と映画は異なるもので、作る人も違うから、作者にとっては意にそわない解釈をされるのはもう仕方ないのでしょう。
あと、ここでも藤澤清造愛は出てますね。
清造の著書に関しては同じものを何冊も高い金出して購入し、パラフィン紙を付けて、ガラスの棚にいれてるとのこと。
清造も天国で大喜びでしょう。
自分の著書も綺麗なものを選んで家蔵しているそうです。
それこそ何冊も買ってその中から印刷状態の良いものを選んでいるとか。
変質的過ぎるけど、このキャラが小説にも出てていいんだなこれが。