「亀裂─老朽化マンション戦記」面白い題材でした

亀裂が入ったゴールドハイツというマンションを建て替えるかどうかで、反対派と賛成派の住人が意見を戦わせるというのが本筋。

で、あとは住民同士の思惑があり、恋愛があり、と肉付けがされている。

あまり無い題材なので、興味が出てきて読んでみました。

何となくですが、あまり住民に切実さが無いというか、主人公の女性が建て替えに反対する理由が、猫と一緒に変わらない生活がしたいというあまり説得力が無い理由だったのが残念。

それでもいいんだけど、後半から同じマンションの反対派の男性住人と恋愛関係になって、反対の考えが無くなっていくのも、何だか読んでて一人取り残された感じでした。

恋愛関係になるにしても、もうちょっとそういう雰囲気を最初にだしつつ、すんなり納得がいくようにしてほしかった。

ただ、マンションの建て替えに関する話は面白くて、容積率がどうのこうので、建て替え費用なしで広いマンションに住めるとか、へーなるほどと思った。

今は、法律が変わってて違うのかもしれないけど。

説明会でこの話を聞いた住人が、ほとんど賛成に傾くところとかすごい、リアルだと思った。

それだけに、賛成派を増やして、利益を独占しようとしている山上と坂崎にもう少し頑張ってほしかった。

なんだか、裏で色々反対派を懐柔しようと工作してるんだけど、話では大人しい感じになってていまいち伝わらなかったのが残念。

賛成、反対であまり、派手にもめることもないし、まあ実際の世の中もそれほど激しくもめる場面はないのだけど、小説だからなあ。

もう少し、賛成派と反対派の戦いみたいなのがほしかったです。