甘いもん好きおやじのブログ

日常の面白いことを描きます。

「反乱のボヤージュ」野沢尚 を読んだ

ホントによくできた小説で、恋愛とか家族愛とか友情とかが全て分かりやすく感動しやすく描かれています。

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伏線も何もかも、しっかり回収できているし、何より登場人物全てに意味があるので、読んだあと、印象に残ってない人がいないです。
特に舎監として寮生を指導する側として送り込まれた名倉が名言をたくさん言うので読んでて頷くことが多く、キャラとして立っています。

主人公の薫平ははっきり言って、影が薄いけど様々な人々の中でもまれていく中で傍観者から、自分で主張して行動していく人に変わっていきます。
そのあたり、急に変わった感じが合って、もうちょっと心の葛藤が欲しかったです。

六個の話に分かれていて、舞台と登場人物が共通した短編集とも取れるけど、一貫して名倉と若者たちの対話という形は通しているので、読んでて長編のようでもあります。
各話は、それぞれの寮生にスポットライトが当たる話で、キャラクターの個性が伝わる内容です。
これは最終話の一致団結に向けての闘争への助走とも取れます。

本編を12等分すれば、テレビドラマ1クール分になるのではないかというくらい、よくできた展開です。
あと登場人物も大学生なので、その時代の若手俳優を使えば、視聴率も取れそうです。
十数年前の小説だけど、普遍的な自分とは何か、とか、家族とは、とかそういうことを問うている話なのでいつの時代でもドラマ化できそう。
さすが、テレビドラマの脚本化が書いた話だけのことはあります。

ただ、小説としては余りによく出来た良い話と、展開と、さわやかすぎるキャラクターたちで、現実味はちょっとなかったです。
各キャラクターが暴動の騒乱の中、困難を乗り越えて恋愛が結ばれていくけど、そんなにうまく行かないだろっていう感じはしました。
もっと、そこは小説らしくうまくいかないとこや、ドロドロした葛藤とかが欲しかったです。
そこは廃寮という問題と、学生闘争という昔の現実を描いているのだから、何もかもが死闘しながらもうまくいかないことを描いてほしかったです。

うまく行くところ、さわやかな恋愛は、色々話の内容を変えてくれるテレビドラマの方に任せて欲しかったです。