甘いもん好きおやじのブログ

日常の面白いことを描きます。

池井戸 潤「下町ロケット」

文章が読みやすいです。
すらすら頭に入ってきます。
小難しい表現とかが無いので、素直だし、何よりロケットの難しい専門的な内容も、分からなくても読めてしまうように書かれています。
物語のキーテクノロジーであるバルブって何?って状態で、結局よく知らないまま全編読めてしまったので、ストーリー自体が面白いのだと思います。

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話に関して言えば、水戸黄門のような勧善懲悪と言った内容です。
中小企業である町工場の社長が、大企業の横暴を打倒し自らの夢であるロケットを飛ばす(実際にはロケットの一部品であるバルブの提供)という、簡単に言うとそんな内容です。
ただ、ベタだけどやっぱり見せ方とか展開で面白くしているし、ページをめくる手が止まりませんでした。

登場人物が主人公から見て悪役っていうのがよく分かる描かれ方をしています。
主人公の会社を特許侵害だと訴えるナカシマ工業の面々や、資金繰りの弱みに付け込んで特許を安価で買い取ろうとする帝国重工などは悪役のお手本みたいな感じでした。
ただ、悪役視点から見ると、主人公が特許を手放そうとしなかったり、自身の夢のために部品提供だけをお願いしてきたりと、主人公が自分勝手に見えたでしょうね。
ただ、小説としては小さくて弱いものが大きくて強いものを倒すという、判官びいき的な日本人好みのストーリーとしているので、感動しやく感情移入しやすかった。

敵は社外だけでなく、社内にもいました。
主人公の佃が特許ビジネスを拒み、帝国重工に対して部品提供をすると言い出したとき、社員のほとんどが反感しました。
営業や技術職の一部の社員は実際に、佃の夢を妨害しようとしますが、大企業の横柄で傲慢な態度に自社がプライドが傷付けられたことで、見返してやろうと心が変わります。
そして、佃社長を中心に一丸となって帝国重工の厳しい受入テストに立ち向かっていきます。

ものづくりをしている職業の人は読んでて共感する部分も多いと思いました。
特許料ビジネスの方が確実にお金が入るのに、それをやらず、社員や社員の家族を犠牲にするかもしれない、部品提供を選ぶ佃社長の姿勢って、夢を持って働いてたり自分の技術に自信がある人は読んでて共感できるはずです。