甘いもん好きおやじのブログ

日常の面白いことを描きます。

「志願せよ!」バースト・ゾーン―爆裂地区

2回読みました。
たまーに好きなところを拾い読みしたりしてます。
それくらい面白かったです。

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テロリンという、テロを引き起こす正体不明の何かを倒すために、志願して大陸に渡る人たち。
志願兵募集ポスターが街を埋め尽くし、傷を負った帰還兵が「志願せよ!」と声をかけてきます。
戦意発揚のためのラジオからは、大陸での対テロリン戦の戦況が有利であることを連日報道しています。だけど、本当は?
国家は、銃後の不安はないと言っておきながら、実際は残された家族がどうなるのかは分からない。
大陸に渡ったら渡ったで、テロリンなどどこにもいなくて、代わりに神充という人間の脳を吸い取る化け物が大量に跋扈していて、、、

この世界はどこかにかつて存在した世界に似ています。

神充という敵に、人間が立ち向かう事において、歯が立たないことが分かっています。
機動力も、数も人間に比べて圧倒的ですから。
人間が神充の攻撃から逃れるための方法が面白いです。
希望を持たないこと、何かを志向しないこと、意味を考えないこと。
そうすれば、神充から悟られずに、一発逆転の場所「地区」を目指すことが出来るようです。
「地区」という曖昧な場所の名前と、はっきりと何をする場所なのかぼやかしているところ、が不気味でいいです。

人間は、「生きる意味とは何か」とか、「自分って何?」とか愛だの恋だの頭で色々考えずにはおれない存在です。
そんな人間の考えを忌避する神充は、そんなこと考えている人間を見つけては脳を吸い取ります。
人間側もそれに対処するために、自分では何も考えないようにするのですが、「地区」を目指すこと自体が希望そのものなので、その途中で悉く見つかり、脳を吸われてしまいます。
こういった、人間にとって八方ふさがり設定や、そんな中どうなっていくんだろうっていう展開が面白いです。

グロい描写のオンパレードですが、美しい場面もたくさんあります。
危険な大陸に、大好きな椹木を追って志願した寛子の、運命が美しく悲しいです。
帰還した椹木に宛てた、寛子の最後の手紙が泣けます。